Tibet ASγ Experiment

地下ミューオン観測装置

天体からやってくる超高エネルギーのガンマ線の強度は弱く、 一様にやってくる宇宙線の数百分の1以下しかありません。 つまり、観測したデータ中にガンマ線信号があったとしても、その数百倍の宇宙線による雑音に埋もれてしまいます。 空気シャワー観測装置だけでは観測した空気シャワーの元がガンマ線なのか、宇宙線なのか、知ることはできません。 我々は宇宙線雑音を劇的に減らすために、空気シャワーに含まれるミューオンの数に着目しました。 ガンマ線起源の空気シャワー中のミューオン数は宇宙線起源のそれと比べて50分の1程度なので、 ミューオン数を計測して、それが少ない事例を選別することで、ガンマ線を雑音である宇宙線から分離することが可能となります。 そこで、純度の高いミューオン数を測定するために、空気シャワー中のミューオン以外のほとんどの粒子が遮断される地下2.4mに、 水チェレンコフ型ミューオン観測装置を新たに建造し、2014年に観測を開始しました。 この地下ミューオン観測装置は世界最大の面積約3,400 m2を誇り、 水深1.5mのプール中に光電子増倍管を取り付けた構造になっています。 これにより、ミューオンが水中で発するチェレンコフ光を観測し、空気シャワー中のミューオン数を計測します。

また、この地下ミューオン観測装置は宇宙線の種類を知るためにも使われます。 宇宙線の正体は主に、水素 (原子番号1番) の原子核から鉄 (原子番号26番) の原子核です。 宇宙線が作る空気シャワーに含まれるミューオンの数は元の宇宙線の原子番号が小さいほど少なく、大きいほど多くなる特徴があります。 この地下ミューオン観測装置を使って空気シャワー中のミューオン数を計測することにより、 元の宇宙線の原子核の種類を知ることが可能になります。


Tibet AS+MD

チベット空気シャワー観測装置と地下ミューオン観測装置の検出器配置図 (右) と地下ミューオン観測装置の検出器断面図 (左)。 右図の色付きの大きい正方形が地下ミューオン観測装置。 一つの正方形が54 m2の水チェレンコフ型粒子検出器。 16個で1プールを構成し、全部で4個のプールが設置されている。 右図の白抜きの小さい正方形は空気シャワー観測装置の検出器。



Tibet MD

水チェレンコフ型粒子検出器の内部。 水槽になっていて観測時は真っ暗である。ミューオンが水中を通過するときにチェレンコフ光と呼ばれる微かな光を出す。 その光を天井から吊した直径50 cmの光電子増倍管で検出する。 水槽の大きさは 7.35 m × 7.35 m × 水深1.5 m。天井の上には厚さ 2.4 m の土が載っている。



Tibet MD

建設中の地下ミューオン観測装置。 プールの床と壁の鉄筋が組み上がったところ。この後、壁の型枠を組んでコンクリートを流し込む。



Tibet MD

建設中の地下ミューオン観測装置。 プールの屋根まで完成して、土を埋め戻す直前。

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